第1回研究会 レポート(2026/02/25開催)

 自動運転社会を見越したサステナブルな公共交通の実現を目指す「公共交通事業のDX推進コンソーシアム」は、2026年2月25日に第1回のコンソーシアム会議および研究会を開催いたしました。 本会議では、バス事業者が主体となるDX・自動運転推進の活動方針を共有し、あわせて、バス業界が直面している構造的な課題や、自動運転・DXを取り巻く制度・技術環境、そして現場の事業者が日々実感している課題について、幅広く活発な意見交換が行われました。

 1.コンソーシアムの活動概要と方向性

 バス事業者主体の課題解決: ベンダー主導や技術先行の導入ではなく、バス事業者自身が主体となり、現場の経営や運用の課題を出発点として技術や制度を再構成していくことを基本方針としています。

 段階的なアプローチ: 自動運転の導入そのものを直接の目的とするのではありません。まずは運行管理や車両整備、周辺業務のデジタル化を先行させ、公共交通の運営全体を段階的に最適化していくことを目指します。

 2.公共交通を取り巻く環境への共通認識

 地域交通の深刻な危機: 単に赤字路線が増えるだけでなく、事業主体そのものが地域から消滅しつつある深刻な状況にあります。モータリゼーションやテレワークの定着による定期収入の減少、「2024年問題」による拘束時間の制約、さらに低賃金や将来像の不足に伴う人材流出が重なり、持続可能性が大きく揺らいでいます。

 自動運転の「実証」と「社会実装」のギャップ: 自動運転は単純な人員削減の解決策ではありません。実際には、整備・通信・法務・セキュリティといった新しい業務や、それに伴う人材・制度の整備が必要となります。政府目標やレベル4の解禁が注目される一方で、現在の許認可は限定的な条件下にとどまっており、広範な社会実装にはまだ多くの課題が残されています。

 本質的な課題: 技術の進化だけでなく、制度・人材・インフラ・地域社会への受容性を一体として捉える総合的なアプローチが必要です。ただ「走れること」と、実際に地域で「使われること」の間にあるギャップを埋めることこそが本質的な課題です。

 3.自動運転・DXにおけるバス会社の課題と意見交換

 現場のバス会社からは、実務に基づいたリアルな意見や懸念が数多く寄せられました。

 安全への責任と現実的な進め方: 万が一の事故が経営や社会的信用に与える影響は計り知れません。そのため、段階的に実証を進める現実的なアプローチが不可欠です。また、急ブレーキなどの安全上の懸念が払拭されない限り、乗客の命を預かる事業者として導入の判断は下せません。

 経営改善への寄与とコストの壁: 自動運転がどのように経営改善に結びつくのか、現状ではまだ見えにくいという懸念があります。特に都市部では、交通の混雑や歩行者の多さから技術的なハードルが高い一方で、導入が直接の収益増にはつながりません。高額な車両やシステム費用も大きな障壁となっており、最終的には人件費削減などのコスト体系と見合うかどうかが普及の分水嶺となります。

 標準化と独自性のバランス: システムの共通仕様化や共同化を進める必要性がある一方で、一画一的な標準化によってシステム全体の脆弱性が高まるのではないかという懸念も挙げられました。

 一過性のイベントで終わらせないために: 過去の実証実験が「実施すること」自体で完結してしまった反省を踏まえ、単発のイベントに終わらせないための主体的な取り組みが求められます。自動運転をゴールとせず、あくまで地域交通の将来像を議論の主軸に据えなければ、技術の導入が目的化してしまい、地域交通の本質を見失う恐れがあります。

 「手段」としての再定義と利用者の協力: 自動運転を交通政策の「手段」として再定義し、どの領域で協調し、どの領域で競争するのかを整理することが重要です。また、地道な技術の積み重ねを社会へ説明し続ける必要があります。さらに、サービスを成り立たせる条件として、お店の「セルフレジ」のように、利用者側にもキャッシュレス化などの一定の手間や変化を受け入れてもらう視点も必要ではないか、という意見もありました。

 次回の予定
 次回の研究会では、今回洗い出された課題をさらに整理し、その解決に向けた具体的な活動について議論を深めていく予定です。

 ●出席者(敬称略)
東急バス株式会社、京浜急行バス株式会社、パシフィックコンサルタンツ株式会社、株式会社エヌケービー、東京都市大学の5者が事務局となって、宮城交通株式会社、しずてつジャストライン株式会社、静岡鉄道株式会社、神姫バス株式会社、大阪市高速電気軌道株式会社、大阪シティバス株式会社、東急株式会社、その他見学のバス会社複数